2009年10月10日土曜日

金木犀と運動会

 金木犀と沈丁花だけはたまらんなあと、秋と春には思う。サルベージ船が海底から沈没船を引き揚げるように、匂いは記憶の海からいろんなものをたぐり揚げる。季節の移りかわりを風に運ばれる匂いで感じるのは、都会であっても同じだ。で、とくに金木犀と沈丁花の匂いは、頭の中のサルベージ船団を総出動させてしまう。

 小学校で恒例の「親子運動会」が開かれた。近所の町内会対抗の運動会だ。ちゃんと、前日から準備をしてテントを立て、椅子、テーブルを並べ、マイクその他音響も用意する。競技種目は毎年決まっているらしく、競技のやり方、用意するもの、人員など、すべて競技ごとにまとめられた冊子ができている。なかなか力が入っている。うちの小学校は生徒数が1000人近くいるので、春の学校の運動会は親、ジジババその他が詰めかけると、とてもじゃないがまともに観戦はできないのだが、この秋の親子運動会はそこまで人が集まらないので、校庭もゆとりがある。そして、金木犀の香りがその校庭中に流れている。当日は、これ以上ないくらいの運動会日和。僕はPTA役員なので「用具係」をやった。実はこれ、一番ハードな係で僕は午前中でもうぼろぼろになってしまった。お昼のお弁当は学校のPTA室で食べたのだが、2階の窓からは校庭がよく見えた。となりの中学校からブラバンがやってきて演奏した。この写真を見る限り、昭和40年代といっても通りそうなのどかな雰囲気。だが、実は、僕は後から知ったのだが、入口近くのテントで観覧していた80過ぎの町内会長が、突然倒れ、一時は心肺停止になり、学校の先生たちの必死の救命で奇跡的に蘇生するという事件があったのだった。心臓マッサージをやり、マウストゥーマウスで息を吹き込み、それでもだめで学校そなえつけのAEDを出してスイッチを入れようとしたところで、老人が息を吹き返したんだそうだ。そういえば、救急車が来ているのは見たが、そんな緊迫した事態があったとは思わなかった。そして、この町内会長、病院で自分の町内がリレーの決勝戦に勝ち進んだと聞くと、午後の観覧にまた戻ってきたのだそうだ。元気というかなんというか、迷惑この上ない話だ。そんなこんなもまた、金木犀の香りの中で起こった事なのだった。

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